コンテンツにジャンプ
がん対策研究所

トップページ > がん検診の有効性評価 > がん検診ガイドライン > がん検診ガイドライン > 肺がん  (最新:2025年度版)

肺がん  (最新:2025年度版)

有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン(2025年度版)

有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2006年度の公開後、重喫煙者に対する低線量CT検査による肺がん検診のランダム化比較対照試験の結果が公表され、欧米ではすでに肺がん検診として導入されています。一方、厚生労働省による全国調査では、すでに約14%の市区町村で低線量CTを用いた肺がん検診が国の指針に基づかない検診という形で行われています。対象者や撮影線量などを統一した方式が定められておらず、過剰診断などの不利益が懸念されます。新しいガイドラインでは低線量CTの有効性評価を行うのと同時に、これまでわが国で行ってきた胸部X線検査と重喫煙者に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法についても再検討しました。

重喫煙者に対する低線量CT検査:推奨グレードA

重喫煙者に対する低線量CTは、複数のランダム化比較対照試験による死亡率減少効果が示されており、対策型検診及び任意型検診における肺がん検診として推奨します。対象年齢は50-74歳、検診間隔は1年に1回が望ましいです。

重喫煙者に対しては、胸部X線検査よりも低線量CTのほうが利益が大きいと考えられます。

注. 重喫煙者とは喫煙指数(1日平均喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人で、現在も喫煙している人と禁煙してから15年以内の人も含まれます。

重喫煙者以外に対する低線量CT検査:推奨グレードI

現時点で、重喫煙者以外に対する低線量CTの死亡率減少効果を示す科学的根拠はなく、国内でランダム化比較対照試験が進行中ですが、検診による利益の有無は不明です。一方、重喫煙者と同等あるいはそれ以上の不利益があると考えられ、対策型検診としては勧められません。ただし、利益と不利益に関する説明を十分受けた上で個人の判断として任意型検診として行うことは可能です。

胸部X線検査:推奨グレードA

米国のランダム化比較対照試験で死亡率減少効果が示唆され、国内の症例対照研究による結果と矛盾はありません。喫煙状況にかかわらず対策型検診及び任意型検診における肺がん検診として推奨します。対象年齢は40-79歳、検診間隔は1年に1回が望ましいです。

重喫煙者に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法:推奨グレードD

重喫煙者において胸部X線検査に喀痰細胞診を上乗せすることによる効果は明確でありません。国内では喫煙率の低下により喀痰細胞診の標的病変である肺門部扁平上皮がんは激減し、喀痰細胞診によって追加的に発見される肺がんは全国で年間20-30人程度です。 また、喀痰細胞診を追加すると、胸部X線による不利益に加えて侵襲性の高い精密検査である気管支鏡の検査件数も増加するので、不利益が大きくなります。対策型検診及び任意型検診における肺がん検診として実施しないことを勧めます。
喀痰がある人は肺がんに限らず様々な呼吸器疾患の可能性があるため、がん検診ではなく、速やかに医療機関を受診するように勧めます。


有効性評価に基づく肺がん検診ガイドラインがPDF形式でダウンロードできます。

報告
形式
題名 概要
ガイドライン 有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年度版(PDF:1.59MB) 科学的根拠に基づき、肺がん検診の推奨グレードを提示している。
エビデンスレポート 肺がん検診エビデンスレポート2024年度版(PDF:7.91MB) 肺がん検診ガイドラインの根拠となった研究についてシステマティックレビューの結果をまとめている。
パブリックコメント集 (近日公開) ガイドラインのドラフト版に寄せられたパブリックコメントとその回答をまとめている。

有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン(2006年度版)

非高危険群に対する胸部X線検査、及び高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法:推奨グレードB

死亡率減少効果を示す相応な証拠があることから、対策型検診及び任意型検診における肺がん検診として、非高危険群に対する胸部X線検査、及び高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法を推奨します。ただし、二重読影、比較読影が必要です。

 

低線量の胸部CT:推奨グレードI

低線量の胸部CTによる肺がん検診は、死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診としては勧められません。任意型検診として行う場合には、受診者に対して、効果が不明であることと、被曝や過剰診断などの不利益について適切に説明する必要があります。なお、臨床現場での撮影条件を用いた非低線量CTは、被曝の面から健常者への検診として用いるべきではありません。

 

有効性評価に基づく肺がん検診ガイドラインがPDF形式でダウンロードできます。

報告
形式
題名 概要
完全版 有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン(PDF:12MB) ガイドライン作成のため根拠とその過程をすべて記載している。
根拠となった文献の要約も添付資料に提示している。
普及版 有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン. 癌と科学療法:34;481-501(2007) 完全版からガイドラインの重要部分を集約・簡略化。
市民版 リーフレット公開のページに掲載しています。