コンテンツにジャンプ
がん対策研究所

トップページ > がん検診の有効性評価 > がん検診の考え方 > 推奨グレード(以前のバージョン)

推奨グレード(以前のバージョン)

推奨グレード(2019年度版まで)

これまでの推奨グレードは、死亡率減少効果を評価した研究手法が無作為化比較対照試験が行われている場合に推奨A、観察研究のみの場合に推奨Bとしていました。しかし推奨Aと推奨Bの間に推奨の強弱はつけておらず誤解を招きやすいことから、2019年度版においては推奨Bを廃止し、実施を推奨するものは推奨Aのみとしました。またこれまでの推奨Cは、利益はあるものの不利益が大きいものを対策型検診では実施を推奨できないとしていましたが、実際推奨Cに判定されたのは、最初に作成した大腸がん検診ガイドラインでの大腸内視鏡検査のみでした。今回から推奨Cについては、利益と不利益の差だけでなく、医療資源の大幅な不足や対象者の嗜好性に大きな問題がある場合に、具体的な課題を明示し、それがすべて解決された場合に実施できる(解決されない場合は実施を推奨できない)ものとしました。また推奨Iについては、これまで任意型検診で適切な説明に基づき個人レベルで受診の是非を検討することとしていましたが、適切な説明が十分行われていない現状を鑑み、インフォームドデシジョンメーキングの推進を課題として明記しました。

推奨グレードの定義(改定版)

推奨

内容

対策型検診

任意型検診

有効性

(利益)

詳細

課題

A

対策型検診・任意型検診としての実施を推奨する

推奨

推奨

あり

検診による利益が不利益を明らかに上回るので、検診としての実施を推奨する

精度管理の徹底

C

課題が解消された場合に限り、対策型検診・任意型検診として実施できる

課題解消の場合に限り、実施可

課題解消の場合に限り、実施可

あり

検診による利益があると判断できる証拠があるものの

・検診の利益と不利益の差が小さい1)

・検診を行う医療資源が大幅に不足している2)

・対象者の大半が、がん検診の受診を選択しない3)

のいずれかの問題がある。

・有害事象減少のためのリスクマネジメント

・偽陽性率の低下(カットオフ値再検討など)

・検診回数の減少(対象年齢、検診間隔の検討)

・医療資源の確保

・対象者への教育・啓発

I

対策型検診では実施しないことを推奨する。ただし、任意型検診では個人の判断で受診可。

実施しないことを推奨

利益と不利益に関する適切な情報を提供し、個人レベルで受診の判断する

不明

検診による利益があると判断できる証拠が不十分。

インフォームドデシジョンメイキングの推進

D

対策型検診・任意型検診として実施しないことを推奨する

実施しないことを推奨

実施しないことを推奨

あり/

なし

・検診による不利益が利益を明らかに上回るので、推奨しない

・検診の有効性がないことを示す科学的な証拠がある。

不適切ながん検診実施の中止

推奨Aと推奨Bは、実施を推奨するという点について同等であったことから推奨Bを削除した。

注1:不利益が大きく、検診から受ける利益が小さい。偶発症頻度が高い場合、リスクマネジメントに努め、有害事象を減少できれば実施できる地域や施設がある。

注2:医療機器や技術者の確保ができずに、検診の普及の障害になる。医療資源には、必要な技術を持つ人員、必要な設備・備品、予算、それに充てられる現実的な時間が含まれる。

注3:検診を受けることに身体的・社会的負担や費用負担があり、対象者の大半が検診受診を選択しない。あるいは悪いイメージや容認できない不利益があるため、選択しない。

 

推奨グレード(2014年度版まで)

推奨グレードは、対策型検診と任意型検診における実施の可否を示しています。推奨グレードは、各種がん検診の利益と不利益のバランスを考慮して決定します。がん検診の主たる利益は死亡率減少効果であり、研究の信頼性は証拠のレベルで示されています。一方、不利益とは、偽陰性率、偽陽性率、過剰診断、偶発症、放射線被曝、感染、受診者の心理的・身体的負担などがあります。

 

表5 推奨グレード

推奨 表現 対策型検診
注1
(住民検診型)
任意型検診
注2
(人間ドック型)
証拠の
レベル
A 利益(死亡率減少効果)が不利益を確実に上回ることから、対策型検診・任意型検診の実施を勧める 推奨する 推奨する 1+/2+
B 利益(死亡率減少効果)が不利益を上回るがその差は推奨Aに比し小さいことから、対策型検診・任意型検診の実施を勧める 推奨する 推奨する 1+/2+
C 利益(死亡率減少効果)を示す証拠があるが、利益が不利益とほぼ同等か、その差は極めて小さい ことから、対策型検診として勧めない 任意型検診として実施する場合には、安全性を確保し、不利益に関する説明を十分に行う必要がある。その説明に基づく、個人の判断による受診は妨げない 推奨しない 個人の判断に基づく受診は妨げない 1+/2+
D 利益(死亡率減少効果)のないことを示す科学的根拠があることから、対策型検診・任意型検診の実施を勧めない 不利益が利益(死亡率減少効果)を上回ることから、対策型検診・任意型検診の実施を勧めない 推奨しない 推奨しない 1+/2+
I
注3
死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、利益と不利益のバランスが判断できない。このため、対策型検診として実施することは勧められない。 任意型検診として実施する場合には、効果が不明であることと不利益について十分説明する必要がある。適切な説明に基づき、個人レベルで検討する 推奨しない 適切な説明に基づき、 個人レベルで検討する 1-/2-/03月04日

注1:対策型検診は、公共的な予防対策として、地域住民や職域などの特定の集団を対象としている。その目的は、集団におけるがんの死亡率を減少させることである。対策型検診は、死亡率減少効果が科学的に証明されていること、不利益を可能な限り最小化することが原則となる。具体的には、市区町村が行う老人保健事業による住民を対象としたがん検診や職域において法定健診に付加して行われるがん検診が該当する。

注2:任意型検診とは、医療機関や検診機関が任意で提供する保健医療サービスである。その目的は、個人のがん死亡リスクを減少させることである。 がん検診の提供者は、死亡率減少効果の明らかになった検査方法を選択することが望ましい。がん検診の提供者は、対策型検診では推奨されていない方法を用いる場合には、死亡率減少効果が証明されていないこと、及び、当該検診による不利益について十分説明する責任を有する。具体的には、検診センターや医療機関などで行われている総合健診や人間ドックなどに含まれているがん検診が該当する。

注3:推奨Iと判定された検診の実施は、有効性評価を目的とした研究を行う場合に限定することが望ましい。