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がん検診Q&A 医療従事者向け
更新日 : 2026年4月30日
総 論
ガイドラインは市町村のがん検診の実施にどのように活用すればよいのでしょうか?
ガイドラインは、がん検診について、検診従事者や受診者が適切な検診を行う(受ける)ための判断を支援するために、系統的な方法で作成されたものです。がん検診ガイドラインは、がん検診の有効性に関する証拠を吟味し、利益と不利益のバランスを考慮した上で、わが国で実施可能な方法を推奨しています。この成果は、がん検診の導入や実施を考える上で、重要な判断材料となりますが、推奨される方法の導入・実施を規制するものではありません。
ガイドラインで推奨されていない検診を対策型検診として行ってもよいのでしょうか?
推奨されていない検診の大半は、死亡率減少効果(利益)を示す証拠が不十分、あるいは利益と不利益の差が小さいものです。対策型検診は日頃健康に暮らしている住民に公費を用いて行うものであり、利益がはっきりしないものを提供することにどんな正当性があるのか説明責任があるはずです。また健康に問題がないはずの住民に公費で不利益を与えてしまうことは絶対に避けるべきです。自治体が、推奨されていない検診を住民に提供する場合は、きちんとした計画に基づいた“研究”として行われるものに限定すべきです。
現状の住民検診は、個人単位で受診するかどうかを決めているし、自己負担もとられているので、任意型検診と同じではないでしょうか?
住民検診として、がん検診を実施するにあたっては、企画・立案・契約から受診勧奨(広報での通知も含まれる)にいたるまで、何らかの公的資金が用いられています。スクリーニング検査の費用が全額自己負担であって、受診するか否かを本人自身が判断したとしても、受診を勧奨した以上は施策として実施した対策型検診であると考えるのが適当です。したがって住民検診では、自己負担額の大きさにかかわらず、市町村は責任を持って検診のメニューを決定するべきで、受診者の自己責任にすべきものではないと考えられます。
ガイドラインとは異なる意見もあるのは、なぜでしょうか?
ガイドラインは、ある一定のルールで文献を検索して評価し、一定のルールで推奨を決定したものです。このルールについては、国際的に標準的な手法を用いていますので、同じルールに基づけばほぼ同じ結論になると考えられます。しかし、異なるルールを用いた場合は、異なる結論が得られることもあります。また、ガイドラインの証拠の評価基準として、複数の研究結果の一致性を重視していることもあり、単一の研究結果では決定されないことも想定されます。 米国等では国内に複数の団体からガイドラインが提示されていて、評価や推奨が異なることがあります。どちらを採用するかは、がん検診の提供者が判断することになります。
どの臓器の検診を、がん検診のメニューに取り入れるべきでしょうか?
がん検診として有効性の評価が行われている臓器は、罹患率・死亡率の高いものに限られています。特に対策型検診の場合は、限られた予算を有効に活用するという観点から、がん検診の有効性が確認された罹患率・死亡率の高い臓器に限定すべきです。具体的には男性では胃・大腸・肺、女性ではこれに加えて乳腺・子宮頸部をメニューに取り入れるべきでしょう。
PETなどの新しい検診・検査法が、新聞やテレビなどでよく報道されますが、これらを検診のメニューに取り入れてはいけないのでしょうか?
簡単な検査法であっても、検査を行うことによる利益と不利益があります。たとえ検診としての入り口の検査による直接の障害がなくても、精密検査により事故や障害が発生する可能性もあります。検診はあくまで健常者を対象とするもので、精密検査による事故などの不利益も、検診に責任があります。精密検査での不利益も検診実施前に受診者に知らせる必要があります。従って、検診を実施するには、利益と不利益について慎重に判断した上で、判断すべきです。しかし、一般的に検診の利益や不利益の評価には、少なくとも10年程度の期間が必要です。
乳房・子宮頸部と女性のみを対象としたがん検診はありますが、男性のみを対象としたがん検診はないのでしょうか?男性のみの検診を提供しないことは問題ではないでしょうか?
男性のみに起こりうるがんには、精巣がん・前立腺がん・陰茎がんがあります。このうち前立腺がんの評価等については、前立腺がんのところを参照してください。多くの国では公的資金を用いた検診として、乳房・子宮頸部といった女性のみの検診だけが行われています。サービスの均等化を図るために検診のメニューを増やすことよりも、有効な検診に限定して実施することで、対策型検診としての効果を最大化させることが可能になります。
がん検診の対象年齢をなぜ区切る必要があるのですか?
がんは、年齢や性別で罹患率が大幅に異なります。100 人に1人程度罹患する年代もあれば10万人に数人の年代(一般には若年者)もあります。利益はあくまでがんが早期発見されて救命に寄与した場合にのみ生じますので、罹患率の低い集団では利益は得られにくいですが、不利益は罹患率の低い集団にもほぼ一定の割合で起こりえます。したがって、利益と不利益のバランスから言えば、一定の年代で対象者を区切る(年齢の下限を決める)必要があります。一方、年齢の上限は罹患率の観点からは、高齢者を含めるべきですが、合併症等で精密検査や治療に耐えられない可能性が高くなります。高齢者に対しては、精密検査や治療を受ける意志があるかを事前に確認しておく必要があります。
ガイドラインでの推奨は変更されることはないのでしょうか?
基本的には5年の時点で新たな研究を含めて、見直しをします。ただし、ガイドライン公開から5年に満たない、比較的早い時期に新しい研究結果が明らかになった場合、早めに証拠の見直しを行い、評価や推奨が変更する可能性もあります。
日本の住民検診として行われているがん検診は、自己負担もあり自由意思により参加できるので、「任意型検診」と変わらず、「対策型検診」とは異なるのではないでしょうか。
対策型検診とは、対象集団全体の死亡率減少を目的として実施するものを指し、公共的な予防対策として行われます。このため、有効性が確立したがん検診を選択し、利益は不利益を上回ることが基本条件となります。対策型検診として市町村が行う住民検診でも自己負担が必要な場合がありますが、検診の受診は元来自由意思によるものなので、この点で任意型検診との相違があるわけではありません。対策型検診と任意型検診の大きな相違点は「目的」にあります。任意型検診には、必ずしも対象集団全体の死亡率減少を目的とはしない、様々な形態のがん検診が含まれます。
「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」で推奨されていないがん検診であっても、住民検診として定着しつつある方法があります。この場合、「対策型検診として推奨しない」と判断することは不適切ではないでしょうか。
「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」の目的は、がん検診のもたらす利益と不利益について科学的根拠に基づいて判断した上で推奨を示すことです。その際、住民検診として定着しつつあることを、推奨に関する判断材料として重要視することはありません。なお、がん対策推進基本計画個別目標には「すべての市町村において、(略)科学的根拠に基づくがん検診が実施されること」と記載されており、検診の実施の判断に科学的根拠が求められています。本ガイドラインはあくまでも市区町村にその根拠を提供し判断を助けるための資料です。
新しいがん検診の方法について、海外の無作為化比較対照試験で死亡率減少効果が証明されれば、我が国であえて評価のための研究を行う必要はないのではないでしょうか。
がん検診の有効性評価研究として最も信頼性の高い無作為化比較対照試験は、高額の研究費と10年単位の長い研究期間を要するため、すべての国で実施できるものではありません。このため、諸外国の研究成果を取り入れることも重要です。ただし、諸外国における医療提供体制、診断・治療の現状、人種などの背景要因と我が国との相違を考慮するためには、我が国独自の有効性評価研究も必要です。独自の無作為化比較対照試験が行えればベストですが、諸外国の無作為化比較対照試験で既に死亡率減少効果が証明されている場合には、比較的短時間で研究成果の得られる、個人の受診歴に基づいた、大規模コホート研究、症例対照研究が有用だと考えられます。また、我が国における対策型検診として導入するためには、我が国の罹患率に応じた検診対象者や受診間隔の設定に必要な情報と、検診のもたらす不利益に関する情報を独自に収集する必要があります。
今後、新しい検診方法を住民検診に導入するためにはどのようなことが必要でしょうか。
今後、新しい検診方法を対策型検診として住民検診に導入するためには、「がん死亡率が減少すること」と「不利益が少ないこと」を明らかにすることに加え、受診率の向上や精密検査受診につながるか、現場で安定して運用できるかといった実施可能性(feasibility)についても検証することが必要です。
新しい検診方法の有効性を示すには医療経済学的な検討が必要ではないでしょうか。
医療経済学的な検討(費用効果分析など)は、有効性の確立したがん検診を限られた資源のなかで実際に導入することが可能か、あるいは効率的に行えるかを検討するものです。有効性の確立していない検診方法について医療経済学的な検討をしたとしても、その結果から有効性を証明することはできません。
胃がん検診
CEAなどの腫瘍マーカーを使った胃がん検診を検討対象にしなかったのはなぜですか?
CEAなどの腫瘍マーカーは、偽陰性率や偽陽性率が高いためにがん検診には利用されていません。そのために今回は検討対象から除外しました。CEAについては、進行がんの治癒判定や再発の有無などのモニターとして用いられているのが現状です。遺伝子診断も同様に、がんにかかりやすい人の拾い上げには役立ちますが、まだ実験室での研究段階でがん検診には利用されていません。国立がん研究センターのガイドラインは、あくまでも実際にがん検診に利用され、その成績が論文になった検査法に関してのみ、論文を吟味して、科学的にその有効性を評価したものなのです
大腸がん検診
便潜血検査で本当に大腸がんが見つけられるのですか?
大腸にがんができると便がこすれて目に見えない出血が起こります。便潜血検査とは便の中にこの出血がないかどうか調べるものですが、皆さんの想像以上に正確で、毎年検査を受けることにより約8割の大腸がんを見つけることができます。
大腸がん検診で便潜血が陽性となった方が「痔のせいだと思う。大腸内視鏡検査はつらいと聞いているので受けたくない。もう一度便潜血検査が陽性となれば仕方なく内視鏡検査を受けようと思う」と言っています。これで良いですか?
便潜血検査の再検は不適切です。便潜血陽性と痔とはあまり関係ありません。間欠的な出血(出血する日もあれば出血しない日もある)が大腸がんの特徴です。便潜血を再検して陰性であっても、“大腸がんでない”ことの保証にはなりません。必ず内視鏡で大腸全体を検査してがんが出来ていないかどうか確認するよう勧めてください。現在では、内視鏡機器と挿入技術の進歩により検査に伴う苦痛は以前よりも軽減されています。
大腸の内視鏡検査はとても正確だと聞いていますが、なぜ市町村の検診では推奨されていないのですか?
確かに大腸の内視鏡検査は正確です。しかしながら欠点としては、(1)大腸を空にするため(前処置)に時間がかかる、(2)一度に大勢の検査ができない、(3)検査のできる医師がまだ多くない、(4)検査に伴う事故(大腸からの出血や大腸に穴があくこと)の危険性があることが挙げられます。従って、住民検診では推奨していません。一方で人間ドック等では、これらの危険性等について十分に説明し受診者の同意を得た上であれば実施が許されます。市町村の大腸がんの検診としてはまず便潜血検査を行い、便潜血陽性であれば内視鏡検査を行うことをお勧めします。
「最近便秘になってきた。時々肛門から出血もある。直腸がんではないかと心配なので、来月、市の大腸がん検診を受けようと思う」と発言する方がいます。このような方でも大腸がん検診を受けて大丈夫ですか?
この方の場合は、がん検診は不適切です。がん検診は症状がない人が受けるものです。便秘や腹痛、肛門出血のように気になる症状がある(特に最近出現した)場合には、病院で大腸内視鏡検査を受けるよう勧めてください。
大腸がんの手術を受けた人についても今後の検査は便潜血検査で良いですか?
一度大腸がんに罹ると、再び大腸がんに罹る危険性が他の人よりも高く(高危険群)なります。従って、今後の検査は便潜血検査ではなく大腸内視鏡検査を勧める方が良いでしょう。
肺がん検診
乳がん検診などは2年に1回なので、肺がん検診もそれに合わせて2年に1回受ける人もいるようなのですが、それでも良いですか?
それは望ましくありません。肺がん検診の場合は毎年受診しないと検診の効果が持続しません。ぜひ、毎年受けることをお勧めしてください。そして、肺がんで命を失わないためには、第1に禁煙が重要であることを強調してください。
同じ「肺がん検診」という名目なのに、検診を受注するための費用が著しく異なる業者がいるのはなぜですか?
肺がん検診は胸部X線を行いますが、「二重読影」「比較読影」などを行わなければ精度が高く保てないと考えられています。「二重読影」や「比較読影」は人手がかかるので、当然コストがかかり、業者の中にはそれらを行わないものもあると聞いています。安価でも低質であれば検診の効果は期待できませんので、よく確認してから契約すべきと思われます。「がん情報サービス」上に、「事業評価のためのチェックリスト」や「仕様書に明記すべき必要最低限の精度管理項目」が公開されています。それらを活用することにより、最低水準は保証されると考えられます。
CT検診は早期肺がんがたくさん見つかるときいたのですが、推奨されていないのはなぜですか?また、CT検診は無効なのですか?
がんの一部に、進行速度がきわめて遅く放置しても死につながらないがんがあり、このようながんを見つけることを過剰診断と言います。CT検診で早期肺がんがたくさん見つかったとしても、このようながんを見つけている可能性もあるので、がん死亡が減ったという証拠がないうちは、その検診は推奨することはできません。一方で、CT検診が無効かというと、一律にそうとは言えません。現在の科学的根拠では、喫煙指数600以上の重喫煙者に対する低線量CT検診については、肺がん死亡率を減少させる効果が確認されており、実施が推奨されています。しかし、それ以外の方に対する低線量CT検診については、有効性は現時点で明らかでなく、不利益が上回る可能性があるため、対策型検診としては勧められていません。
検診機関でCT検診を低線量で行っているかどうかわからないのですが?
標準的な線量ではX線被曝の影響が無視できないので、任意型としても検診には向かないと考えられています。どのような医療機械を使用しているのかは施設によって異なりますので、直接確認する必要があります。
前立腺がん検診
PSA検診はなぜ対策型検診として推奨されていないのでしょうか?
PSA検診については、前立腺がん死亡率減少効果を示した研究がある一方で、効果が明確でない研究もあり、研究結果は一致していません。そのため、わが国の有効性評価では、死亡率減少効果の有無を判断する証拠は現時点では不十分とされています。また、PSA検診では、他のがん検診と同様、精密検査や治療の不利益もあります。従って、証拠が不十分で不利益も無視できないPSA検診を対策型検診として行うことは現在のところ推奨していません。
PSA検診はなぜ任意型検診として実施することができるのでしょうか
任意型検診は、対策型検診とは異なり、個人のリスクを減少することを目的として、医療機関が任意で提供する検診です。このため、必ずしも対策型検診としてのがん検診として効果が確かではなくても、実施されることがあります。しかし、本来は、がん検診として確かな証拠がある方法が実施されることが望ましいといえます。
任意型検診としてPSA検診を実施する場合には、どのようなことに注意したらよいでしょうか?
任意型検診でも、受診者には正しい情報を提供することが必要です。受診者へPSA検診の効果が不明であることや、精密検査や治療の不利益について説明してください。その上で、受診者自身が受診の判断をできるようにするべきで、受診を勧めたり、強要することは望ましくありません。
PSA検診は国際的に行われているのでしょうか?
PSA検診を国策として行っている国はリトアニアなど非常に少数で、多くのガイドラインでは、対策型検診の実施を推奨していません。ただし、欧米では、任意型検診としてPSA検査からパイロット事業や追加研究の段階に移行する国もあります。
欧米で公表された前立腺特異抗原(PSA)検診に関する大規模研究の概要を教えてください。
ERSPC(European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer) は欧州7カ国による無作為化比較対照試験、PLCO(Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial)は米国内10施設による多施設共同の無作為化比較対照試験です。
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ヨーロッパの研究
ERSPCは欧州7カ国182,000人を対象とした無作為化比較対照試験であり、その主たる対象は50~74歳でした。この他、ポルトガル、フランスも参加していますが、今回の解析ではこれら2カ国は除外し、対象も55~69歳に限定して解析しています。介入群72,890人、対照群89,353人を8.8年間追跡した結果、介入群から214人、対照群から326人の前立腺がん死亡を認めました。その結果、対照群に比べた場合の介入群の前立腺がん死亡のリスク比は0.80 (95%CI:0.65-0.98)となり、統計的有意な前立腺がん死亡率減少を認めました。
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米国の研究
PLCOは米国内10施設による多施設共同の無作為化比較対照試験です。55~74歳を対象とし、介入群38,343人、対照群38,350人を11.5年間追跡しました。このうち、全例の追跡が完了している7年目において前立腺がん罹患率は介入群で22%高かったものの(リスク比: 1.22, 95%CI: 1.16-1.29)、前立腺がん死亡リスク比は1.13(95%CI: 0.75-1.70)と両群で差がありませんでした。
欧米で公表されたPSA検診に関する大規模研究に何か問題点がありますか。
現在公表されている、欧州で行われたERSPC、米国で行われたPLCOの結果は中間結果であり、両者とも追跡期間が短い(ERSPCで平均8.8年、PLCOで11.5年)という問題点があります。その他に、それぞれの研究には以下のような問題点があります。
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ヨーロッパの研究
ERSPCは前立腺がん罹患率・死亡率や医療制度の異なる国々における多施設共同の無作為化比較対照試験であり、診断基準や死亡原因判定のプロセスなど基本方針の取り決めはあるものの、研究デザインの詳細は各国で異なっています。このため、対象年齢、検診方法、検診間隔、追跡期間、PSAのカットオフ値、精密検査である生検の実施率も異なっています。インフォームド・コンセントの取得も異なり、4カ国では割付前に全例に行っていますが、3カ国では割付後の介入群に限定して行っています。また、死因の判定方法もERSPCとしての定義や方法などの基本方針は示されていますが、各国ごとに行われており、統一判定ではありません。現時点で報告された解析結果は、これら様々なデザインで行われた研究をひとくくりにして解析をしたものです。国別あるいはデザイン別のサブグループ解析をした場合、全体の解析結果と必ずしも一致した結果は確認されていません。米国の研究で問題点として指摘されているコンタミネーション(対照群におけるPSA受診)は、一部の国からは報告されていますが、ERSPC全体としての報告はありません。
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米国の研究
PLCO研究は、ERSPCと異なり米国内に限定した多施設共同研究で単一の研究プロトコルが用いられているため、研究デザインの一貫性は保たれています。しかしコンタミネーション(対照群におけるプロトコル外のPSA受診)が高いことが問題となっています。対照群において、PSA検査を一度でも受診した人の割合は1年目は40%で、6年目には52%まで増加していると報告されています。またPSA検査の頻度でみると、検診目的で介入群5.0回、対照群2.7回と推計されています。研究群と対照群との間でPSA検査を一度でも受診したか否かという比較性はある程度損なわれていますが、コンタミネーションが高いために、介入群と対照群の比較が全くできないというわけではありません。
欧米で公表されたPSA検診に関する大規模研究の結果に基づき、海外でガイドラインの推奨度を変更したところはありますか。
欧米で公表されたPSA検診に関する大規模研究の結果を踏まえ、一部のガイドラインでは推奨内容の見直しが行われています。米国のU.S. Preventive Services Task Forceのガイドラインは2018年に55–69歳男性ではGrade C、すなわち「利益と不利益を説明したうえで個別判断」に変更しました。70歳以上は引き続きGrade D「推奨しない」のままです。EU理事会は2022年にがん検診勧告を改訂し、前立腺がんを組織型検診の対象候補に加え、パイロット事業・追加研究を推進するよう加盟国に求めています。多くのガイドライン作成団体では、ERSPCとPLCO研究の結果を踏まえても推奨内容に大きな変更は加えられておらず、現在もこれらの長期追跡調査の結果が待たれている状況です。任意型検診を主体とする米国ではPSA検診を集団レベルで積極的に推奨する方向ではなく、受診者と医師による共同意思決定(Shared Decision Making)を通じた個人のレベルでの意思決定を重視する方向に変化しつつあります。
子宮頸がん検診
前回の子宮頸がん検診で精密検査が必要と判定され、現在定期的に婦人科を受診しています。次回の子宮頸がん検診を受けてもいいでしょうか?
がん検診の対象者は無症状で子宮頸がんに関連する病気のない方です。前回の子宮頸がん検診で精密検査が必要とされ、現在も受診中であれば、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)という前がん病変がある可能性があります。したがって、がん検診ではなく、婦人科でのフォローアップ(診療)を引き続き受けていただくことが大切です。いつフォローアップを止めて検診を受けてもいいかについても担当医とよく相談することが必要です。
子宮頸がん検診を受ければ、子宮体がんも発見できるのでしょうか?
子宮頸がんが子宮の入り口である頸部に発症するのに対して、子宮体がんは子宮の奥、体部に発生し、それぞれ全く異なるがんです。子宮頸がん検診では頸部の細胞を採取するので、たとえ体部にがんがあってもそれを採取することは困難です。またHPV(ヒトパピローマウイルス)感染も子宮体がんとは無関係です。
細胞診の自己採取法があるようですが、これは検診機関や人間ドックを受診して行なう細胞診と同じでしょうか?
「自己採取法」は、検査を受ける人が自分で手探りで細胞を採取する方法です。そのため、子宮頸部からきちんと細胞採取することはほとんど不可能で、がん細胞の見逃しも報告されています。検診機関や人間ドックでは、医師が目視で子宮頸部を確認し、適切な部位から細胞診のための検体を採取する「医師採取法」が実施されています。がん検診では、「医師採取法」が推奨されています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)はどのように感染しますか。またそれを防ぐ方法はありますか?
ヒトパピローマウイルス(HPV)は性交渉によって感染することが知られています。コンドームはある程度HPV感染を減らすことが期待できますが、完全ではありません。
また、近年HPVに対するワクチンが開発され、HPV感染を予防することが期待されています。現在は複数のワクチンがあり、HPV16型や18型に加え、31型、33型、45型、52型、58型などを含む複数の型への感染を予防するものもあります。ここで注意しなければならないことは、これらのワクチンはすでにHPVに感染してしまった人に対する治療効果はありません。したがってワクチン接種の効果が最も高いと考えられているのは性交渉開始前の十代始めの年齢層です。また、子宮頸がん発症に関連するとされるハイリスクHPVには複数の型が存在しますが、ワクチンはそれらすべてを完全に予防できるわけではありません。ワクチン接種後も子宮頸がん検診をうけることが重要です。
ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した場合、どの程度ががんになるのでしょうか。
HPV感染の大半は一過性感染ですが、一部の前がん病変が発症します。しかし、前がん病変であっても病変の大半は消退・停滞し、浸潤がんに進展するものはごくわずかです。
前がん病変のうち最も進行度が高いCIN3(高度異形成)であっても浸潤がんに進展するのは50%以下と考えられています。
