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なぜ「発見率」ではだめなのか
がん検診の評価方法としてよく用いられるものとして「発見率」や「生存率」があります。これらの方法は算出が容易で、医療従事者になじみやすいものです。しかし、両者ともに検診を評価するための公平な視点に欠けていることから、真にがん検診の有効性を示す指標とはなりません。
「発見率」はスクリーニング方法の精度だけでなく、対象となる集団の有病率の影響を受けます。がんの罹患は年齢が高くなるほど、増加しますし、性別によっても異なります。たとえば、胃がんでは60歳以上の受診者が多い地域検診では発見率が高く、30~40歳代が中心の職域検診では発見率が低くなります。
表1は、高齢者の多いA市と40歳代の多いB市で胃がん検診を行った結果を示しています。発見率は、A市がB市の2倍以上になります。この理由は、検診の精度ではなく、もともとA市のほうが高齢者が多く、検診を行えば多くのがんが見つかるからです。A市とB市で検診を行った医療機関の差より、がんの有病率が発見率を大きく左右してしまいます。
発見率の差は、がん検診の方法の精度や診断能力の差よりも対象集団の年齢や性別に影響を受けます。従って、「発見率」の高い検診機関が必ずしも診断精度が高い優良施設とは限りません。
男性 | 胃がん有病率 (/100000) |
間接X線 感度 |
A市 | B市 | ||
対象者数 | 胃がん発見数 | 対象者数 | 胃がん発見数 | |||
40歳から44歳 | 68 | 0.717 | 5000 | 2.4 | 35000 | 17.1 |
45歳から49歳 | 118.4 | 0.717 | 5000 | 4.2 | 40000 | 34 |
50歳から54歳 | 211.8 | 0.717 | 10000 | 15.2 | 20000 | 30.4 |
55歳から59歳 | 360.4 | 0.717 | 10000 | 25.8 | 15000 | 38.8 |
60歳から64歳 | 582.6 | 0.717 | 15000 | 62.7 | 15000 | 62.7 |
65歳から69歳 | 790.8 | 0.717 | 30000 | 170.1 | 10000 | 56.7 |
70歳から74歳 | 1030.6 | 0.717 | 40000 | 295.6 | 5000 | 36.9 |
75歳から79歳 | 1206.8 | 0.717 | 30000 | 259.6 | 5000 | 43.3 |
合計 | 0.58 | 0.22 | ||||
がん発見率(%) | 835.6 | 319.9 |