• 調査報告
      日本CT検診学会

  • 「がん検診の有効性評価」についてのアンケート調査報告(PDF:2.1MB)がPDF形式にてダウンロードできます。


    背景:がん検診の有効性については、平成10年3月の「がん検診の有効性評価に関する研究班」報告書(主任研究者 久道茂)をはじめとして、平成11年3月、平成13年3月と過去3回にわたる評価判定が行われている。平成13年には、がん検診の適正化に関する調査研究事業「新たながん検診手法の有効性評価」報告書(主任研究者 久道茂、以下、久道班報告書)が公表された。これらの報告書ではがん検診の有効性評価の重要性について認識が新たにされたものの、実施主体への情報提供が円滑にすすまなかったこともあり、必ずしもがん検診に関する政策決定には直結していなかった。有効性評価の内容については、一般国民のみならず、がん検診を担当する医療従事者(医師、放射線技師、保健師など)の間にも周知されておらず、有効性の確立していないがん検診が、一部の地域や職域、人間ドックなどで行われている。地域における実態は、平成14年度老人保健事業推進等補助金「がん検診に関する効果的な推進方法の開発に関する検討」研究班(主任研究者 辻一郎)により報告されている。
    科学的根拠に基づいたがん検診を推進するには、がん検診の有効性を正しく理解し、真に効果が認められる方法を広く国民に提供することが必要である。このためには、がん検診の有効性について、がん検診を担当する医療従事者(医師、放射線技師、保健師など)により理解しやすく、政策決定に適用可能な情報を提供していくことが課題となる。
    現在、厚生労働省がん研究助成金による「15-3がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班(主任研究者 祖父江友孝)において、新しい知見に基づき、「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」の作成・更新が進められている。がん検診ガイドラインを適切に伝えていくためにも、有効性評価がどの程度理解されているかという実態を正確に把握する必要がある。そこで、平成13年公表の久道班報告書について、その理解度と適用状況を把握するためのアンケート調査を行い、実態に基づいた情報提供の方法やがん検診推進に寄与するサポートシステムを構築することを目指すものである。


    目的:本研究は、久道班報告書について、アンケート調査により日本CT検診学会会員の理解度と適用状況を把握し、検診従事者へのがん検診の有効性に関する情報提供の方法や、科学的根拠に基づくがん検診推進に寄与するサポートシステムの構築について検討するための基礎資料の収集を目的とする。


    方法:日本CT検診学会で、平成18年3月現在の個人会員で所属・所属機関住所の判明している603人を対象としてアンケート調査を行った。なお、厚生労働省がん研究助成金による「15-3がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班(主任研究者 祖父江友孝)の分担研究者、研究協力者のうち、同学会の会員を兼ねる3人も対象より除外した。


    結果

    1) アンケート回収率及び回答者の特性
    アンケートの回収率は、42.5%(256人/603人)であった。回答者は、男性214人(83.6%)、年齢は50歳以上が130人(50.8%)であった。回答者のうち、69%が医師であった。
    2) 久道班報告書の周知度
    久道班報告書については、168人(65.6%)が認知していた(問1)。報告書の情報の主な入手経路は(問2)、報告書そのもの52人(20.3%)、学会・講演・研修会76人(29.7%)、学会誌や保健・医療関連の雑誌53人(20.7%)であった。報告書の内容は(問3)、127人(49.6%)が理解できた(よく理解できた、理解できた)と回答していた。報告書の利用法は(問5)、講演会や研究会などの資料77人(30.1%)、受診者への説明76人(29.7%)、検診実施計画の資料49人(19.1%)であり、とくに利用していない44人(17.2%)であった。
    3) 推奨される検診方法の実施について
    肺がん検診として推奨されているX線検査を実施しているのは(問6-1)、直接X線161人(62.9%)、間接X線89人(34.8%)であり、推奨されていない方法であるCTを行っているのは、129人(50.4%)の施設であった。胃がん検診として推奨されているX線検査を実施しているのは(問6-2)、 直接X線143人(55.9%)間接X線82人(32.0%)であり、推奨されていない方法であるペプシノゲン法を行っているのは、41人(16.0%)の施設であった。大腸がん検診では(問6-3)、161人(62.9%)が便潜血検査(免疫法)を実施していた。有効と判定されていない方法でがん検診を行う理由(問8)としては、受診者の要望(61.1%)、発見率が高い(50.0%)を挙げていた。
    4) ガイドラインとがん検診
    公共的な政策としてがん検診を提供する場合(対策型検診)、久道班報告書で有効と判定されていないがん検診を行う是非について(問12)、「行ってもよい」との回答は55人(21.5%)であった。一方、個人が自主的に受診するがん検診を提供する検診機関では(人間ドックなどの任意型検診)、久道班報告書で有効と判定されていないがん検診を行うことについては(問13)、「行ってもよい」との回答は192人(75.0%)であった。
    5) がん検診の有効性評価
    がん検診の有効性評価の指標として適切なものとしては(問41)、当該がん死亡率97人(37.9%)発見がんにおける早期がん割合93 人(36.3%)、生存率84人(32.8%)、検診方法の感度・特異度82人(32.0%)、がん発見率73人(28.5%)であった。
    6) がん検診に関する情報提供
    がん検診についてあればよいと思う情報について(問9)は、精度管理の方法124人(48.4%)が多く、以下、受診者への説明文書123人(48.1%)、検診の事後調査の方法116人(45.3%)、検診の成果を評価するためのツール115人(44.9%)、受診率向上対策93人(36.3%)、検診データの管理90人(35.2%)と続いた。
    日本CT検診学会会員に、久道班報告書を普及させる必要性(問10)は、「はい」200人(78.1%)、「いいえ」14 人(5.5%)であった。その方法として期待されるのは(問11)、ホームページ64.5%、学会誌での解説60.5%であった。ホームページについて(問44-5)、国立がんセンターホームページへのアクセス経験が、192人(75.0%)に認められた。



    考察:久道班報告書の認知度は高く、理解度も同様に高かった。しかし、がん検診の有効性評価の指標として、がん発見率や生存率などの中間指標を適切とする回答が25%以上見られた。また、対策型検診・任意型検診において、推奨されていない方法を「行ってもよい」とする回答は比較的高いことから、ガイドラインの普及に反して、がん検診の有効性評価に関する真の理解が普及しているとは言い難い状況にあることが示唆された。今後は、ガイドラインの普及の前提として、がん検診の基本的な考え方についても合わせて周知していくことが必要と考えられた。
    日本CT検診学会において、ガイドラインを普及させていくことについて、積極的な姿勢が見られた。ガイドラインの利用状況も、研修会などの資料から、受診者への説明など幅広く活用されている。受診者への説明資料などにも活用されている現状から、受診者への説明も含め、理解しやすい簡易版や要約作成の必要性も示された。ガイドライン以外の情報としても、精度管理や受診率向上といった、実務的な情報への要望が多かった。国立がんセンターホームページへのアクセスも比較的高いことから、ガイドラインの普及と共に、関連の情報について、国立がんセンターがん対策情報センター や科学的根拠に基づくがん検診推進のページ(本ページ)などを通じて、継続的な情報発信ができるよう検討していきたい。




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